医療費控除適用、領収書添付不要へ 平成29年分より
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毎年一定額以上の医療費がかかっている方もいれば、今年はたまたま家族全員でけっこうな医療費がかかってしまったという方もいるかと思います。
一定額以上の医療費がかかった方は、確定申告で医療費控除の適用を受けることで、所得税や住民税の納付額を減額することができます。
適用要件や控除額の金額計算に変更はありませんが、平成29年度より手続きが少し変更されることになりました。ここでは、その変更点について確認致します。
目次
領収書の代わりに医療費控除の明細書の添付へ
従来までは、医療費控除の適用を受けるためには、医療機関等から発行された領収書を添付して、確定申告書と合わせて提出する必要がありました。
平成29年度分の確定申告からは、領収書の添付が不要となり、その代わりに「医療費控除の明細書」の添付が必要となります。
すでに国税庁より書式フォームが公表されてますので、そちらもご確認下さい。
医療費控除の明細書の記載内容
医療費控除の明細書の記載内容は大きく以下の3点になります。
1医療費通知に関する事項
2医療費(上記1以外の)の明細
3控除額の計算
1医療費通知に関する事項
記載内容のうち、こちらの内容は平成29年度からの大きな変更点の1つでもあります。
年に1度、健康保険証の保険組合から1年間にかかった医療費の明細が記載されている「医療費のお知らせ」というハガキ(保険組合によって名称が異なります)が会社(事業主)宛に送られてきて、皆さんの手元に届いていると思います(医療機関等の受診がなければきません)。
その届いた「医療費のお知らせ」等の通知をもとに、①その通知に記載された医療費の額、②①のうち実際にその年に支払った医療費の額、③②のうち生命保険や社会保険などで補填される金額を記載します。
この「医療費のお知らせ」等の通知の内容を記載することで、2の医療費の明細の記載を大幅に省略することができます。
また、「医療費のお知らせ」等の通知については「医療費控除の明細書」に添付する必要があります。
2医療費(上記1以外の)の明細
こちらは、1の記載を行わなかった場合や1の記載した内容以外にも医療費控除の対象となる内容がある場合に記載します。
⑴医療を受けた方の名称には、実際に医療を受けたご本人のお名前や生計を同じくするご家族のお名前を記入しましょう。
⑵については欄の名称どおり、病院や薬局などの支払い先の名称を記入し、⑶の該当する区分にチェックし、⑷に支払った金額を記入し、生命保険や社会保険で補填される金額があれば、⑸に記入します。
なお、1年間で同一の人が同一の病院や薬局を複数回利用した場合には、その支払合計額をまとめて記入することができます。
3控除額の計算
こちらは、欄に従って、計算記入を行い、最終的な医療費控除額を算定します。
注意点として、所得によっては10万円を超えなくても、医療費控除を受けられるケースがあることと、医療費控除の上限額は1年間で200万円であることに気をつけて下さい。
添付しなかった領収書の取り扱い
「医療費控除の明細書」を添付することで、領収書の添付は不要とはなりますが、廃棄していいわけではなく、5年間の保管義務があるため、大切に保管しましょう。
場合によっては、税務署が内容確認のため、領収書の提出を求めることもあります。
ただし、「医療費控除の明細書」の1医療費通知に関する事項を記入した上で、「医療費のお知らせ」等の通知を添付提出した場合には、その内容に関する領収書の保管義務はありません。
平成31年分までは従来どおりでOK
ここまで、平成29年分からの手続き変更点について説明しましたが、平成31年分の確定申告までは、従来どおり領収書の添付又は提示によることができます。
まとめ
今回の手続き変更の最大のメリットは、保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」等の通知書を利用することで書類記入が楽になる点です。しっかり活用して、確定申告手続きをスムーズに進めましょう。
今後は、マイナンバーの活用により、より手続きが簡素化されることが予想されます。
現に政府は、マイナンバーカードを使って利用できるウェブサイト「マイポータル」上で保険適用医療費データを取り込み、1年間の医療費を自動集計し、電子申告できるようになることを目指しています。
こちらはもう少し時間がかかりそうですが、今回の手続き変更で、1歩近づいたと言えるでしょう。