法人成りのメリットとデメリット

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法人成りのメリットとデメリット
起業するときは、はじめから法人を設立する場合と、まずは個人事業でスタートしてあとで法人を設立する場合があります。個人事業から法人を設立することを「法人成り」と呼びます。
個人事業でスタートして事業が軌道に乗ってくると、一度は法人成りを考えるのではないでしょうか。これから、株式会社の設立を前提に法人成りのメリットとデメリットをご紹介します。法人成りを考えるときの参考にしてください。
法人成りのメリット
税制上有利になる
法人成りのメリットにはさまざまなものがありますが、税制上のメリットは見逃せません。
【経営者自身の所得税で給与所得控除が使える】
法人成りをして会社から給与を受け取るようにすれば、経営者自身の所得税で給与所得控除が使えます。給与所得控除は、55万円から195万円(2020年分以降)の範囲で所得から差し引くことができるので、節税につながります。【経営者自身の所得税の税率が低くなる】
所得税は所得が高くなるにつれて税率が上がり、最高で45%になります。加えて10%の住民税がかかります。一方、法人税や事業税などを合わせた法人の実質的な税負担は、中小企業では30%台にとどまります。事業での黒字が多くなればなるほど、法人化したことのメリットが活きてくるというわけです。
一定以上の所得が見込まれる場合は、事業で得た収益から経営者自身に給与を支払って、残りを法人の所得にします。そうすることで、法人と経営者個人に所得が分散され、経営者自身の所得税の税率を低く抑えることができます。
どれぐらいの所得があれば、または経営者の給与をいくらにすれば所得分散のメリットが受けられるかを知るためには、綿密なシミュレーションが必要です。そんな時には、法人成りの税務に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
対外的な信用が増す
個人事業と法人では、対外的な印象が違います。大企業では法人であることを取引の条件に定めるケースもあり、法人であることが取引上有利になることがあります。また、金融機関からの融資が受けやすくなり、資金調達面での強みもメリットの1つだと言えるでしょう。
法人成りのデメリット
法人の設立に手間と費用がかかる
個人事業を始めるときは、特に許認可が必要なければ、税務署と都道府県に個人事業の開業届を提出するだけで手続きが終わります。手数料は不要です。法人を設立するときは、会社の基本的な規則である定款を定めて、公証役場で認証を受け、法務局で法人設立の登記をしなければなりません。これらの手続きでは定款認証手数料や登録免許税等が必要になり、手続きを専門家に依頼すればその分報酬料もかかります。
社会保険への加入が義務付けられる
個人事業では、雇っている人が5名未満であれば社会保険(厚生年金、健康保険)への加入義務はありません。一方、法人成りをすると、人数にかかわらず社会保険への加入が義務付けられます。社会保険料を従業員と会社で半分ずつ負担するため人件費が上がるほか、適用関係の戸溶けで管理等が生じて事務負担が増加してしまいます。なお、労働保険は1人でも従業員を雇えば個人事業であっても加入する必要があります。
赤字でも7万円の法人住民税がかかる
個人事業と法人では、下記の表のように税制が異なります。このような税制の違いから受けられるメリットもありますが、デメリットもあります。法人住民税には均等割と呼ばれる部分があり、所得の有無にかかわらず年間7万円が課税されます。
個人と法人の税制の違い
まとめ
事業が軌道に乗ってくると、税金対策や対外的な信用の面から、法人成りを選ぶケースがあります。ただし、事務処理や社会保険で相応の負担が必要になります。法人成りをした方がよいかどうかの判断は、特に税務の面でケースバイケースとなります。メリットとデメリットをよく見極めて判断することが大切です。